さくらKCSとの思い出

第一章

もう何年前になるのだろう。最初の営業だった山下君と岡田君。

私はどうしてもJavaで販売管理を作りたくて探していた。当時Javaで販売管理システムを作っているところなんてNECくらいで、それも初期費用が1億1千万だったと思う。中小企業が手を出せる金額じゃない。

そこへ現れたのがさくらKCSで、B-Prosperという出来たてのホヤホヤで実績ゼロのソフトを提案してきた。

当時は何故Javaかなんて、誰にも理解して貰えなかった。社長に説明しても理解してもらえず、どちらかといえば、2000万と言っていたN社に決めたがっていた。

しかしN社のものは5年経てば陳腐化するのは目に見えていた。私が目指していたのは10年経過してもどこにも負けないシステムであることだった。

もう会社を辞めたから言えるが、私は一計を案じ、見積もりの提出期限をN社に一日遅めの期日で伝えた。

だから約束の期限に間に合ったのはさくらKCSのみ。それで社長を口説き落とし、さくらKCSとやることになった。

山下君と岡田君は喜んで帰るも、翌日出来ないと謝罪に来た。

あまりの短納期でSEが出来ないとのこと。それもそうで、やると決まったのが7月。テスト運用が11月、運用開始が12月。

私は彼らに言った。お前たちは本当にうちとやりたいか?そう尋ねるとやりたいと言うので、SEにこう言えと言った。

出来ないのじゃない。徹夜してでもやる気があれば誰でも出来る。

結局SEが条件付きで折れ、その条件とは自分たちが徹夜をする時は私も徹夜をしてくれという条件。当然その覚悟だったので進めることに。

ところが数日後システムの提案書を持ってきたのだが、私の意見が反映されていない。私はふざけるなと激怒して投げ返した。

そして翌日か翌々日かに、新しいのを作って持ってきた。私が見ようとしないので、営業二人は焦れて見てくださいと懇願。

おい、お前たち。俺に怒鳴られて必死で調べて作り直したんやろ。ここにある提案書は完璧なはずやろ。それなら見る必要は無い。

せいぜいあっても誤字程度。俺の考えがここに入っているんやから、見ないでもわかる。

そうして作業が始まった。当時のSEの由井くんも優れた人物で、短納期でやるために、二人で決めて先行して制作する。二人で決めた事は後付で会社に必ずOKを貰うこと。そんな無謀な約束の元、作業は進み、画面などは、うちの会社で私が見ながら由井君と進めていった。

そういうやり方に社長は不安感を抱き、皆の意見を聞けとのこと。私は今回のシステムは特殊だから人の意見を聞いても始まらない。納期を遅らせるだけだから、それが嫌ならほかの人間に任せてくれと半ば脅迫。

そうして納期通りに完成し、B-PROの第一号の顧客となった。それから10年経過しても、中小企業では日本一の販売管理システムをつかって、且つ最大限使いこなしている会社だったという自負がある。

閑話休題

当時三十代半ばだった山下君が52歳になった。私のシステムの原点はこの連中と知り合ったことから始まる。それ以前に取引があった数社とは、勢いも技術も情熱も違う。

彼らと歩んできた歳月は、永遠に私の宝物だ。

 

第二章

山下君や岡田君が担当では無くなったあと、最悪の営業が担当になった。来たのは2度だけ。名前も忘れたが、担当になった挨拶と担当を辞める挨拶の2回だけ。

その間、SEの富松君や保守の川村君が全力でサポートしてくれた。2人とも個性的で、富松君は女性事務員の質問に対して丁寧に答えて、且つ、社員以上に会社のことを把握して居たので、女性からの信頼は抜群で、無茶な注文にも答えてくれた。

川村君は保守と言っても機械を修理するのではなく、環境を構築し保守するのが仕事。私は慇懃無礼な奴は大嫌いなのだが、唯一彼だけが例外で、丁寧な言葉で平気で無礼なことを言ってくる奴なのだが、憎めない男で、他所では完璧に仕事をこなしているらしい。しかしうちでは上手くいかないことがよく起こり、その度にスーツ姿で汗まみれになって、床に座り込んで仕事をしていた。

サーバーのHDDのサイズを間違えて発注し、スカスカ。ガムテープで固定して、当面これで辛抱してくださいと笑

その度に私に弱みを握られ、会う度にこの話でおちょくるのだが、根が真面目なだけにちょっと焦りながら話を逸らそうとする可愛い奴だ。

他の連中に話をすると、あの川村さんがそんなミスをするなんて信じられないですとの事。よほど方角が悪かったのかもしれない。

そしてその後に担当になったのが濱田というやり手の営業で、挨拶に来た時「うちは営業は要らん」と私に言われ、それがショックだったらしく、しかしめげずに食らいついてきた。

彼は本来のスタイルを捨て、それは意識してか無意識でやったのか、私の懐に飛び込んでくる形で、私の中に入ってきた。半年もすれば無くてはならない営業になっていたから、たいしたものだと思う。

彼が馴染んでからさくらKCSと私とで麻雀をするようになったのだが、これがまた全員、揃いも揃って弱い🤣

何十回かやって負けたのが2回、マイナスは1回のみという戦績。

随分楽しませて貰った。

ちなみにこの営業の濱田君も発注ミスをおかし、私に弱みを握られる羽目に🤣

これで怒って返品すると貸しにはならないので、とりあえず受け入れ、彼が担当を外れるまで、このネタで遊ばせて貰った。

 

第三章

私にとって最後のシステムの構築が定年間際。

仕事に精通した連中が次々と定年を迎えていく、その最初が私。

今後のことを考えると、今使用している販売管理システム、B-PROは完璧だが、我々がいてこそ成立する。我々のやっていることは、販売管理ではないからだ。

そこで将来を見越して、商売の形態が如何様に変化しようとも耐えうるシステム。省力化が可能で、在宅にも対応出来、B2Bをシステムの中で完結させ、今はやっていないがB2CにもB2Gにも対応可能なシステムを作ろうと考えた。

私はこの考えを、早くからSEの富松君に伝えていた。

だからシステム案を持ってきた時、既にほぼ完璧なものだった。

残りは価格の問題だけ。

さて、ここで私にとっては最後で最長の営業、最初に来た時は25歳くらいだった長谷場という男の話をしなくてはならない。

濱田君に脅かされてやって来ただけに、最初は緊張しまくっていた。

ところが慣れるにつれ、彼の可能性を強く感じるようになった。

しかし、濱田君の下では伸び悩む。濱田君も優れた営業マンだが、軸足がはっきりしていて、会社からぶれることがない。

しかしこの長谷場という若者は、ぶれまくるのである。気に入らなければ会社に軸足を置き、気に入れば軸足がお客さんになる。

一般的な基準でお手本になるような営業では無い。しかし一度気に入れば、そのお客さんのために必死で動く。

こういう営業は、会社人間から見れば、顧客に寄り添いすぎに見える。しかし本能的に自分を好んでくれるのかどうかを見分ける力があるので、数さえこなせば間違いなくトップセールスマンになる。

それだけの能力を早くから感じさせていた。

そして数年が経ち、最後のシステムを構築する時、私は条件を出した。富松、川村、長谷場、この三人が入る事。

ところが途中で転勤が決まった。彼は私の約束、会社との約束でもある、この三人でということを破ることに悩んだ。会社を辞めようかなとも言っていた。私は詰問状をKCSに送ったが、結局は徒労に終わった。

さくらKCSの弱点はトップクラスが銀行からやってくるということ。システムの話なんてできないから、歴代営業に、上司は連れてくるなと言い続けていた。型にはまった考え方しかできない銀行員には中小企業のシステムを考えるなんて不可能だ。

それはさておき、この長谷場、嫌われるところからは嫌われる。しかし、好かれるところからは大いに気に入られる。

嬉しくなると酔っ払い、前後不覚にもなるし、記憶も飛ぶ。でも彼を知れば知るほど、それがよくわかり、非常識な発言でも可愛く思えるのである。

私も彼にたぶらかされた一人。私の友人で私がいた会社の営業部長も彼を気に入り、長谷場が東京に転勤となり、営業部長が東京の子会社に出張した時も呼ばれたりしたらしい。

この営業部長も私も、普通なら礼儀とかにうるさい。しかし、懐にはいられるとどうでも良くなる。

ちなみにこの長谷場、私にヘッドロックをしたり、営業部長をおっさんと呼んだり、ハチャメチャではある。ところが喜んで嬉しくてしょうがないのも伝わってくる。

酔いが醒めた翌日、長谷場から電話があり、「私、なにか仕出かしました?」との事。

「ああ、営業部長をおっさん呼ばわりしてた。」

多分受話器の向こうで青ざめていたに違いない。

そして営業部長と電話を代わると、「営業部長のおっさんですが、何か?」

散々おちょくられていた様だが、営業部長から笑顔が消えることは無かった。

由井君にしても川村、富松、長谷場という才能豊かな連中は形にはめてはいけない。

好きにさせれば結果を期待以上に残す。

最後のシステムを決める時、長谷場の上司が挨拶について行こうかと言ったらしいが、長谷場は固辞した。何故大丈夫と言いきれるんだと聞かれると、長谷場は「私が担当だからです」と言ったとか。

まさにその通りで、私にとってのKCSはプロパーの連中であり、銀行からの天下りは全員馬鹿だと思っている。

長谷場は結局売上で答えを出した。会社にとってはユーザー側に軸足を置いてしまうのは迷惑な話かもしれない。

しかし、顧客からみれば無くてはならない男だ。少なくともうちに来た数々の営業マンの中では最も力があるし、まだサナギで大化けする可能性がある。

ちなみにこの話をした時、酔っていた長谷場は喜んで力が余ってヘッドロックをしてきた🤣

部下なら張り倒している。しかし、長谷場の喜び様を見るとこちらまで嬉しくなる。

話を広げ無限の知識で色んなアイデアを出してくる由井君。

取引先の仕事を熟知して、痒いところに手が届くよおうな提案をしてくる富松君。苦しくなっても最後までやり遂げる川村君、顧客の立場で営業をする長谷場君、人たらしの名人、山下君。

みんなありがとう。君たちのおかげで、楽しいサラリーマン生活を送ることが出来ました。

閑話休題

長谷場よ、天下りのおバカ連中にこの記事を見せろよ。そして感想を聞かせてくれ😘